興津小学校にて「ドローンを利用したプログラミング授業」が実施されました!
< プログラミング授業 実践報告 >
四万十町立興津小学校にて、DJI社のドローン「Tello Edu」を利用したプログラミング授業を実施しましたので、授業内容や成果について報告します。
これからプログラミング教育に取り掛かろうとされる多くの小学校の参考となりましたら幸いです。

ドローンで記念撮影
授業実施校
高知県の中心から西へ車で移動。
約1時間半の位置にある、海と山に囲まれた自然豊かな小学校。
それが今回のプログラミング授業の舞台「興津小学校」です。

学校正面入口(※興津小学校HPより)
この地域の人口は927人(2010年調べ)、人口の過疎化が進み子供たちの人数も減り続ける「課題先進地域」。
その昔は1学年2クラスずつあった興津小学校の全校生徒数は現在、
1年生 8名
2年生 2名
3・4年生 5名
5・6年生 6名
の、合計21名。
少なくはなりましたが、ICT教育の推進など、積極的に多くの活動や最新の教育改革を行う熱い先生方が集まっている小学校でもあります。
今回の学習指導略案
授業日時: 令和元年7月16日(火)5・6校時
対象学年: 5・6年生
授業区分: 総合的な学習の時間
主な指導: 学校長 坂本益英
ゲスト講師及びサポート:
合同会社空中八策 吉岡亮
有限会社大斗 知名誠
スターティングPCスクール 土居郁男
単元目標:
グループで協力しながら、課題を細分化してとらえ、手順を検討し、試行錯誤を繰り返しながら意図した動きに近づけたドローンの操作をする。
単元における、これまでに実施済みの授業課程:
1時: Scratchで正方形を書いてみよう!
2時: Scratchで正多角形を書いてみよう!
3時: プログラミングを書いてみよう!(アンプラグド)
本時: Scratchでドローンを飛ばそう! ←ココ
指導展開
高知県は、地理上又は産業や人口減少等により、他の県と比べると10年以上早く様々な課題に直面する、「課題先進県」として揶揄されることが多々ある地域です。
人口の減少と少子高齢化、南海トラフによる地震の備えもまたその「課題」のうちの一つで、今回の授業では、これからの産業で大きな可能性とマーケットが開かれているドローンとプログラミング授業、また、地域課題である災害の備えなど、生徒への意識付けや課題の解決を思考する、まさに「STEAM教育」(生徒児童の数学的、科学的な基礎を育成しながら、彼らが批判的に考え(批判的思考)、技術や工学を応用して、想像的・創造的なアプローチで、現実社会に存在する問題に取り組む)と言える作りとなっている。
※この授業案は、興津小学校の坂本学校長によるもので、ゲスト3社(3本の矢:下記参照)が技術協力等をした。
〇学習活動 T教師 C児童 | 留意点 | |
導入 | これまでの振り返り 講師紹介 |
|
展開① | めあて:「Scratchでドローンを飛ばそう」
〇 スペースの離陸 Aで着陸 ↑↓←→移動 |
T ドローンが危険な飛び方をしないように安全確認のフォローを行う。 |
展開② | めあて:「ドローンで避難している人を探そう」
〇 離陸場所から避難タワー2・4号を回り帰ってくる まとめ:「避難タワーを通るようにプログラムし、タワーの場所で避難者を確認出来るようにドローンを回転させた。」 |
T「ストリーミング開始」ブロックで、ドローンのカメラ映像をPCで見ることが出来る。
T 前時のように飛ばすと、カメラの向きによって避難者を確認できないので、避難タワーの場所でドローンの向きを回転させるなどの工夫が必要となる。 |
まとめ | ゲスト講師からのお話 |
仕様教材
Scratch(スクラッチ):
オフライン版である「Scratch2.0」を利用。
Scratch2.0は、開発用に拡張機能が設けられており、これを利用するとドローンの操作や制御が可能となります。(※画像は英語表記だが、実際は日本語表記で使用)

オフライン版Scratch
Tello EDU(テロー EDU):
従来型のTelloとは色違い。様々なプラットフォームからプログラミング出来るドローン。
プロペラを守るガードの種類が豊富で安全性が高い。
金額:16,800円前後(税込)

プログラミング教育用ドローンTello
※使用教材の技術的な仕組み
ScratchからTelloを制御出来るように、プログラミング用のブロックを拡張機能に追加した他、ドローンの持ち味の一つであるカメラ使用(動画・撮影)を可能にする仕組みを既存のソースを利用して導入した。
利用したのはWindows版の「FFmpeg」。

カメラストリーミングのイメージ図
カメラストリーミングが可能になったことにより、ドローンでの「災害時の活用」などを想定できる授業展開も視野に入った。今回は利用しなかったが、その他音声認識による制御やmicro:bitによる加速度センサーなどにも対応している。
また、そもそものWifi接続などの細かな接続操作を、一つのアイコンにまとめ、すべての接続を「ワンクリック」で完了できるようにした。
これで授業中、先生や生徒が煩雑な作業をしたり教える事なく、すぐにドローンを利用できるようになった。
実際の授業の様子(1限目=展開①)
「Scratchでドローンを飛ばそう」
授業風景:
冒頭は「空中八策」吉岡さんからドローンを安全に利用する心がまえの説明から始まり、坂本先生の主導で授業。スタート位置のフラフープからゴール位置のフラフープ内まで、正確な移動と着陸を念頭に、ドローンの進む距離をメジャーで計測してプログラミングに反映させた。

空中八策・吉岡さんからドローンの安全について説明を受ける

坂本先生がこの時間の目標を生徒とプログラミングの考え方について確認

続いて実際のScratchでのプログラミング方法を解説する

フラフープを使った直線練習コース

メジャーで実際の距離を測定する生徒たち

測定結果を元にプログラムを班で相談して完成させている
▽ 実際のチャレンジ中の動画がこちら ▽
この班は、この後トライ&エラーを重ねて見事ミッションを達成した。
気付き及び成果:
距離などを測りながら「生徒自身が試行錯誤しながらプログラムを作成」する体験は、もし、一度でドローンを上手に制御できなかった場合においても、先生に促されなくても生徒自らが、再度積極的に問題点を考え、新しい解決を見出そうとする、非常に能動的で、学びを楽しく捉えてくれる空間が醸成された。
またそれは、ドローンという視覚からの刺激が強い教材は、生徒のアクティブラーニングを強く促し、画面だけのプログラミング授業よりも強い興味と好奇心の呼び起こし、自然と算数などを積極的に利用するような学びの促進に、抜群の効果がある実証でもあった。
メジャーでの計測時は、生徒たちが各役割(計測・プログラミング・ドローン設置など)を自ら考えて分担、「頼もしさ」さえ感じた。
反省点:
やはり問題となったのは、ドローンとScratchとの接続作業部分。
「アイコンをワンクリック」だけで接続出来るようにはしたが、Telloの電池が切れたりすると、接続を最初からやり直す必要がある。その際に、現在表示されているウィンドウ(node.jsやffmpegなど)をそれぞれ閉じてから、再度接続し直す操作になるが、この操作が先生や生徒には負担となった。
幸い、何度か繰り返されるうちに、生徒自身が慣れて自分で出来るようになったが、「接続」だけではなく、何かのトラブルの為の「切断」もスムーズに出来るようにするべきだった。
今後は、Scratch上から「接続」も「切断」も出来るようにして、生徒の不要な負担をなくす。
実際の授業の様子(2限目=展開②)
「ドローンで避難している人を探そう」
授業風景:
避難タワーに見立てた2つの椅子に、避難者のイラストを貼って、生徒たちからは見えないように設置。この時間では、ドローンのカメラ機能を利用して、災害時を想定したドローンの活用を意識する授業展開を行った。

ドローンのカメラで避難者を確認する 三角形の応用コース

まずはミッションの内容説明と飛行経路の確認

ドローンは三角形に飛行しなければいけない

正確な飛行経路の要となる分度器でドローンの進行・回転角度を調べる

三角形の1辺の長さ(飛行距離)と回転角度をみんなで確認

計測した数値を使って、プログラミングを完成させる
▽ 実際の角度及び距離計測中の動画がこちら ▽
先生方は、計測する生徒を周囲で見守っている。

各時間の最後は、自分たちのプログラムや気づきを発表してみんなで共有した。
気付き及び成果:
分度器とメジャー、これを使って「どのように計測するか」は、事細かに生徒に伝えたわけではない。生徒はそれぞれドローンの進路を自ら考えながら計測し、手元の小さなホワイトボードに記録してくれている。
生徒たちにとって、最初に行ったScratchの基本的な使用方法と、ドローンの基本制御のプログラミングを順序良く体験したことにより、頭の中にはすでに「飛行経路」と「制御プログラム」が完成していたようで比較的スムーズに授業が進んだ。
途中、予期せぬドローン自体の動作における問題点(後述)が発覚したが、この点も、こちらから問題点を指摘すると生徒自身が問題の解決を図り成功するなど、思わぬ学習成果の発揮の場となり、これまでのプログラミング授業などから、生徒の論理的思考力が成長している実証となった。
今回利用したドローン「Tello EDU」は、終始、空中での安定性と距離・角度制御において、多少のトラブルはあったものの、技術サポートさえしっかり行えば、非常に利用しやすい教材と感じた。
反省点:
やはり、ここでもドローンの制御におけるものだが、Scratchとドローンの距離が遠すぎるとWi-Fiによるプログラム指示が届かなくなることがあった。PC作業者とドローンの位置関係に注意が必要である。
今回はドローンの近くまでPCを持っていくことで解決した。
まとめ
ドローンを利用したプログラミング授業の実践例は、全国的にもまだまだ少なく、今回の事例は多くの学校にとっても興味のあるものと考えております。
ドローン自体は、楽しそうで、子供にも人気で・・・
でも、いざプログラミングの教材として利用するとなると、いったいどのように使って、何を学習の目標とすればよいのか・・・
今回の事例は、単なる「論理的思考の育成」にとどまらず、「Society5.0」や「SDGs」も視野に入れた今後の中学・高校にもつながる授業としても有効でしょう。
基本は現場の先生方が主導し、今後のプログラミング授業の展開を検討していただくことが望ましいですが、その技術的・教育的サポートのみでなく、実際の体験出前授業、ドローン自体についての講演や体験講座なども、私たち「3本の矢」(下記参照)は行っております。

一緒に悩み考える楽しさは、大人と子供の垣根をなくしてしまう。

ドローンの産業での利用について説明。大型のドローンは生徒をワクワクさせます。
▽ 授業途中、低学年の生徒たちは、その他のドローンについて見学 ▽
ドローンの赤外線センサーで、自分たちの顔が映ってるのを見て楽しんでいます(^^)
その他 TV・新聞等メディア
今回は、多くのメディアの方々も来てくださり、生徒へのインタビューや学校長の説明、授業風景などを放映・掲載してくださいました。
遠い中お越しくださりありがとうございました!
▽以下、順不同▽
・さんさんテレビ
・テレビ高知
・四万十ケーブルテレビ
・高知新聞社

テレビ・新聞などのメディアも多く取材に。
「3本の矢(仮称)」について
「3本の矢(仮称)」とは、高知県でドローンを使った楽しい授業を展開するグループの名称です。
現在、高知市内にあるドローンに関わる3つの企業の担当者が、共同でそれぞれの持ち味や得意な分野の技術を子どもたちに伝えながら、貴重な大型ドローンの体験や、実際のドローン産業についてのお話、プログラミング授業などを県内各地で実施しています。
▽▽▽ メンバーの紹介 ▽▽▽

NAME:吉岡 亮
PROFILE:
合同会社空中八策 代表
高知大好き。高知に新しい技術と新しい風を送り込み、活性化したいといつも考えているとにかく熱い熱血漢!
ドローンを利用した空撮は今や多くのメディアでも利用されるほどで、数々の賞も受賞している。
「高知でドローン」なら、間違いなく【空中八策】で!
NAME:知名 誠
PROFILE:
有限会社大斗 営業部長
沖縄出身。いつも明るい笑顔と話し方が特徴の、3本の矢きっての頼れるドローンエンジニア!。
誰でも胸襟を開いて話したくなる持ち前の雰囲気で、全国を飛びながら、主に「ドローン×建設」・「ドローン×防災」システムの普及推進を行っている。


NAME:土居 郁男
PROFILE:
[スタパ!]スターティングPCスクール 代表
当HP・ブログの管理者。小学~高校生まで、幅広くプログラミング教育を推進。
2020年から変わる教育のICT化、および「新学習指導要領」などを踏まえ、高知県内の様々な小学校・中学校・高等学校にて実践授業及び研修を実施している。
ドローンで広がるプログラミング授業の新しい可能性と、楽しいSTEAM教育!
私たちは、「高知でもっとも面白い教育」をどんどん追求していきます。
ぜひ、皆様の教室でも体験授業をしてみませんか!
▽▽▽ お問い合わせはこちらから ▽▽▽
合同会社 空中八策
担当/吉岡
TEL:088-802-7025
MAIL:kuuchuu8sk@gmail.com
Special thanks!!
今回利用したDJI製ドローン「Tello EDU」は、DJI公式ストアである深空株式会社さんのご協力もあり、検討が可能となりました。
深空さんは、この他にも多くの小学校などで既にドローンや「IchigoJam(イチゴジャム)」を利用したプログラミング授業を実施しています。